「花てまり・春の色襲ね」に寄せて

♫あんたがたどこさ、ひごさ、ひごどこさ、くまもとさ、♫

まりをついて女の子達が遊んでいた光景、私が幼い頃はまだ普通にあって、

要所要所で足をくぐらせたり、最後はくるりと一回転してキャッチしたりと

子どもながらに技を追求して皆で遊んだ覚えがあります。

それとは別に、もっと昔、御殿女中たちがお姫様のために作ったのが始まり

と言われているのが御殿まりです。

数年前、実家にあった手まりを改めて見直し、その美しさを紙に移せないか

と思い立ったのが「花てまり」を作るきっかけになりました。

 

このたび、『花てまり・季節の色襲ね』としてシリーズ構成にし、和装婚向けの装飾アイテム

にも使っていただけるのではと販売をはじめました。まずは春の色襲ねを下記ショップに出品

しましたので、ご興味あるかたはご覧くださいませ。

Azalea工房creema店

Azalea工房minne店

最初はスチロール球に直接花を貼ることを考えたのですが、すぐに手まりの

幾何学的な美しさは出せないと気づきました。

過去に幾つかスチロール球でのフラワートピアリーを制作しているので、華やかさや

可愛らしさが出せるのはわかっていたのですが。

そこで改めて、①まりという球体を紙で表現、②表面の花を紙で表現、の2つの面から

アプローチすることにしました。

紙で球体を表現するにはいろいろ方法がありますが、表面に花を貼るなら多面体が

一番適しています。

面を増やせば球に近づきますが、作りやすさと見ごたえある花のサイズのバランス

から12面体を選びました。

花がちょうどよく収まるサイズで五角形を作り、手まりの地割線の役目を

担う部分はのりしろと兼ねて出来上がりが梅の花びらのようにしています。

ペーパーフラワー作家である以上は紙でできることは紙で作りたい、紙の特性を

活かしたものにしたい、と試作を繰り返しました。

一番難しいのはなんといっても色合わせです。

無加工平面の紙の状態できれいに見えても、花にした際に、重ねた花弁に影が差し、

色味が変化します。 これがペーパーフラワーの素敵なところなんですが・・・。

さらにお隣の色との関係で生まれる錯視も加わり、平面時の色から微妙にずれてしまう

のです。 単純に色相環で良さそうな組み合わせを選んでも、幾重にも重ね折りやカール

満載の花と、花弁を大きくカーブさせただけのシンプルな花とは見たときのイメージが

全然違ってしまうため、結局は試作して見え方を確認するのが私にとっては時間も手間も

かかるけれどわかりやすい方法でした。

反対に、やぶれかぶれでエイヤッと合わせた色が意外にも古風な佇まいで

生み出してくれたり、となかなか色を扱えているとは言い難い状態ではあります。

そんなふうに試行錯誤してできた自慢の花てまりは、2017年の講座プロブラムにも使い、

カルチャー即売会でもとても好評で嬉しかったです。

花てまりの展開

完成させるまでに手間のかかった花てまりですが、出来上がってみれば単純な形です。

単純なだけに容易に展開できることも嬉しいことでした。

例えば、2017年の正月向けの花羽子板には半球だけを小さく作って房をつけています。

そして、2018年に横浜赤レンガ倉庫で開催されたクリスマスアートコンペティションでは

何種類もの白い紙を組み合わせてツリー仕立てにしたクリスマスの光景が多くのお客様からの

たくさんの嬉しい感想をいただくことができました。

まだアイディア段階ですが、幾つか花てまりの展開を試作中です。

Azalea工房オリジナルとして大切にしたいデザインなので、ゆっくりしっかり作っていきたい

と思っています。

 

手まりの思い出 〜 本荘御殿まり

小さな頃、気づいたら籾殻を袋につめたものを白いしつけ糸でくるくると

巻き固めた玉がいくつも作られていた時期があります。

手芸好きな母が今度は何を作るのかと思っていましたら、

やがてその玉に丸い頭のまち針が打たれ、きれいな色糸でみるみるうちに

地割線が引かれていきました。

 

取っておいたお菓子の箱や缶の中には、リリアンのようなツヤツヤとした

色糸がたくさんあって、その中からこの色、あの色、と母にしかわからない

順に太い針が出入りし、いつの間にか面が埋まり徐々に形が現れる様が

なんとも不思議でした。

 

子ども心に「まり」と聞けば弾ませてみたく、遊び用にひとつもらえないか

聞いたところ、「これは飾りだから弾まないよ」と言われがっかり。

結局、増え続ける母の手まりを見ればいっときはきれいだなとは思うものの、

それだけの存在でした。

 

やはりそうしたものに興味が向かない年頃だったのでしょうね。

もう40年以上前のことですから、母の手まりは最近盛んな創作系の手まりではなく、

基本に則った伝統柄がメインだったと思います。

やがてバブルを迎えるイケイケドンドンな時代の年頃の私にとっては、きれいでは

あっても古くささしか感じなかったのが正直なところでした。

手まりの美しさを感じられるようになった今なら、母と色使いや模様について

話し合ったりできたのに。

何事につけ基礎を習得したら自由にアレンジするのが大好きな母のことだから、

創作手まりにも大いに夢中になったはずです。

我が家のインテリアに合わせた手まりを幾つも作ってもらいたかったなぁ。

 

そんなわけで、手まりには特別な思いを持っているのです。

私なりの艷やかな手まりが作れるよう、一層精進したいと思います。