初夏から夏にかけてのカルチャー講座講座も気がつくと今年で10回目、ということは10種類も夏向けのデザインを考えていたのですね。コロナ禍の時期を除き、通年で講座を持っているため、ひと月に一つ作品を仕上げる時もあれば、4、5、6月で夏の作品一つ、6、7月で盛夏向け、8、9月で晩夏向けと趣向を変えて取り組む年もあるので実際は10種類以上だと思います。 講座作品は全てオリジナルデザインで全く同じデザインを別講座で使いまわすことはほぼありません。対象者や時間、予算などが異なるため、基本の花材は同じでもサイズや数、副資材を変えるなどしてご要望のあった講座に合うキットを考えるようにしています。
記録をみると、カルチャー講座だけで60作品近くありました。このほかに個人レッスン、子ども会やPTA、シルバーグループ向けなどの講座用、さらには販売やオーダー作品などあり、今更ながらにたくさん作っているなぁと感慨深いです。
夏といえば黄色
最近の夏は危険なほど暑い日も増え、夏との付き合い方が難しいですね。暑い日はいっそ朝から海へ繰り出し、本格的に陽がジリジリしてくる昼前には引き上げてかき氷や流しそうめんを楽しんで、午後はお昼寝〜と夏を満喫していたのが、子どもが大きくなったことでそれもなくなり。今は夏を楽しんで過ごすのではなく、なんとかして健康なまま夏をしのいで秋を迎えなきゃ、みたいなサバイバル状態かも・・・。
そんなふうに私にとって歓迎度が下がっている夏ですが、夏用の制作となれば話は別です。夏の黄色い花といえばひまわり、最近は本当にたくさんの品種がありますが、オーソドックスな形で小さく作ってリースにすることにしました。
こんなふうに考えています
夏の作品を何月に何ヶ月かけて作るかはその年によってかなり違います。 クラフト向きのシーズンイベントが少ない夏なので、2、3ヶ月かけた作品が5月いっぱいで完成し、6月のひと月で七夕向きの小さな作品、8月から2ヶ月半で晩夏向きを一つ制作した年もあります。
今年は4月にビオラパンジーのミニミニブーケを作っているので、次は花数多めの作品にしようと考えました。となると、卓上アレンジメント、ブーケ、リース? ビオラパンジーの前がハート型の壁飾りだったので卓上アレンジメントも考えたのですが、いまいち閃かず。
というわけで今回は消去法でリースに決めました。お二人分の完成品がこちら。
メインの花はもちろんひまわり。ビンセントのような小輪の花をメインにしても素敵ですが、今回はたくさんの花が咲く光景にするために、小さなひまわりを選びました。実際にルドベキア、エキナセア、サンビタリアなど、小さなひまわりに見える花がいろいろありますよね。
メインはこのサイズのリースに配置しやすい5つにすることにして、変化を出しやすいようサイズ違いで準備。ひまわりの葉では面白くないので、ミントやアイビーなど5種類の葉を入れることにしました。数種類の葉があることでアレンジの楽しさも味わえますし、生き生きとした印象をつけやすいと思うのです。
ミントのボリュームがあるため、他は抜け感のある葉を選びました。 メインの花を引き立てるアクセントカラーには同じく夏色代表の青、くどくならないようにごく小さな花にします。細い茎をつけて紫陽花のようにまとめてもよし、小さな塊をあちこちに散らすもよし、茎なしで貼り付けてもよし、と使い勝手がいいようにしておきます。 黄色と青、この2色の強い対立を少しだけ和らげるように白い花もいれましょうか。サイズは中輪、一重のヒラヒラ花弁にすることで、色が持つ軽さをさらに軽やかにします。
このように複数色、特にワントーンカラーではなく濃い色を複数使う際は、主張し合ってうるさくならないようにバッファーとなる色を使うようにしています。このリースなら白い花ですね。さらに青い花も縁に白でインキングして強さを和らげ緩やかに色をつなげています。
目指すのは夏のキラキラしたエネルギーを爽やかに感じさせるリースでした。ミントの十字対生をしっかり作り込むことでこんもりしたボリュームが出せます。押せ押せの突き出すボリュームだけでなく、しっかりと高低差をつけて花を配置することで直径20㎝程度の小さなリースにさほどたくさんの花数を作らなくてもこんなふうにボリューム感あるリースが作れました。
見本の意味
生け花やフラワーアレンジメントのようにまず型を学ぶことでその先に個性が表現しやすくなるものとは違い、こんなの作れるかしら、から始まり、少しくらい上手くいかない部分があってもOK、完成して満足感、お家で飾り眺めるときに何度でもこれを作りあげたご自身を誇らしく嬉しく思ってもらえたらいいなぁというスタンスで講座を準備します。
見本作りではあれやこれやと配置を試し、その際にどうしても物足りなければ新たに花や葉を作り足し、反対に不要に思えてきて取り除いてしまうこともあります。(今回はセージもひと枝作ったのですが、どうにも収まりが悪くてキットから抜きました。)
そうやって試行錯誤する見本は、長年のうちに皆さんの参考になるポイントがわかりやすいものに自然と決まるようになりました。とはいえ今でも(うわぁ、花が一直線に並んじゃったよ・・・)なんて焦ることもあるのですが。
見本とあなたの作りたいものは違う
そして見本通りに作る必要は全くないことを繰り返しお伝えしています。 使うパーツの個数が決まっている以上似たものになりがちですが、メイン花以外のあしらいの小花類や葉は分割可能な作りにしたので全体に散らすこともできます。思い切ってリース全体に配置するのも素敵です。
見本と同じ材料を使っても、筋のつけ方や花弁の開き具合、インキングの濃さなど絶対にこう作って!というのはないため、おのずと個性が出てきます。 配置もタイプ違いの見本を複数お持ちできれば一番いいのですがそうもいかず、お教室では生徒さんの完成パーツをお借りして幾つかのアイディアをお見せするようにしています。 いくつかの配置を見て、私も考え付かなかったような素敵なアイディアを思いつきその線で進める方、いろいろ見た上でやはりオーソドックスが好み、と選ぶ方、本当に人それぞれです。
飾る場所によっては教科書的な配置では納得いかない場合もあります。正面からの写真が美しく整っていても、実際に飾る場所、いつも眺める目線から素敵に見えなければ困ります。 例えばテーブル真ん中に置く仮定で作ったアレンジメント見本ですが、生徒さんは玄関カウンターで写真立ての斜め前に置きたいとのことでした。そんな時は後ろ側のお花を少なくして前に持ってくる、写真の色とコーディネートできそうな場合はバッファー色を挟んで配置してみる、など工夫します。完成品だけを写真に撮ると確かに偏った配置ですが、教室で一旦仕上げたものを実際お家で飾ってみて手直しをしたものを写真で拝見したら、とても素敵なコーナーでした。
そんなふうに、生徒さんそれぞれの正解を一緒に探していくと、見本とあなたのつくりたいものは違う、となるわけです。